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秋のフレンチ・コレクション [音楽のこと]

騒々しい蝉の大合唱が終演し、アンコールの蜩斉唱が静かに退場していく。それと交差するように近づくのは忍びやかな秋風のアリア。


ポール・ヴェルレーヌを引き合いに出すまでもなく、秋の風はヴァイオリンの楽音を想起させる。

単調なヴィオロンの節ながき啜泣。

秋→ヴェルレーヌ→ヴァイオリン、単純な連想ゲーム。

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そのせいあってか、秋になるとヴァイオリンの声音が恋しくなって、今月はいつにも増して音楽月間で、多くの音楽イベントに足を運ぶことになるのだが、そのうちヴァイオリンを主人公とするのは3つ。その端緒が今日、大阪倶楽部会館で催される「KCM Concert Series at Osaka Club No.114  “漆原朝子のフレンチ・コレクション”」。
ヴァイオリニスト漆原朝子さんとピアニスト鷲宮美幸さんによるデュオは、ミュジーク・モデルヌ(musique moderne)の美味しいところをぎゅっと集めた、”仏蘭西近代音楽の幕の内弁当やァ”・・・的なコンサート。
タイトルが「フレンチ・コレクション」で、キャッチコピーが「フランスの作曲家たちが心血を注いで書き上げたヴァイオリンの名作を集めて~心の奥底からの想いを魂のヴァイオリニスト漆原朝子が歌い上げる。」ときて、そして演目が・・・

ジョゼフ=モーリス・ラヴェル
ヴァイオリン・ソナタ遺作」(1897年)
ガブリエル・ユルバン・フォーレロマンス 変ロ長調 作品28(1882年)
クロード・アシル・ドビュッシーヴァイオリン・ソナタ(1917年)
アメデ=エルネスト・ショーソン詩曲 作品25(1896年)
シャルル・カミーユ・サン=サーンスヴァイオリン・ソナタ 第1番 ニ短調 作品75(1885年)

・・・と、シェフ渾身の満漢全席というか、好きなものばかり盛り付けた豪華なお子様ランチのようなラインナップ?! おっと、フレンチ・・・ですから、キュイジーヌ・フランセーズなメニューと呼ばないといけませんな。
アントレがラヴェルで、スープがフォーレ、ポワソンがドビュッシーで、ヴィアンドにショーソン、ソルベがサン=サーンス。フランス人作曲家による、フランス近代音楽の粋を集めたようなメニュウ・コンプレ(menu complet)。カロリーが心配になるけれど、ゴージャスで夢のようなフルコース。

今日のフレンチ・レストランは会場となるのは、大阪市内に幾つか残存するレトロ・ビルヂングのひとつ、大阪倶楽部会館で、二代目となる現在の建物は1923(大正12)年1月着工、1924(大正13)年5月竣工、鉄筋コンクリート造・地上4階・地下1階建・延べ床1,043.5坪、総工費550,000円、安井武雄設計・大林組施工の「南欧風様式に東洋風の手法を加味した独自の居心地の良い建物」の4階ホール。国登録有形文化財でもあって、フランス近代音楽を聴くのに相応しい?
ここを訪れるのは二年振り。前回は青柳いづみこさんのレクチャア・コンサート『1915年のドビュッシー ~ ショパンへの想い(→記事参照)』で、ドビュッシー作品の中にショパンの影響を探る、その二人の作曲家の楽曲がプログラム。ベル・エポックな時代のフランス音楽を聴くにはここをおいて他に無い?

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開場が18:30、開演が19:00。仕事終わりに急いで会場へ駆け付けると、すでに多くの聴衆が会館入口前に行列し、全席自由となる客席のいい場所が確保出来るかどうかは微妙なところ。
が、結果、ピアニストの手元が観える最前列を確保することが出来ました。

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開場なったレトロなビルヂングの瀟洒なホールで演奏家を待つピアノはSteinway & Sons B211。建物の割りには、それはそれほど古くないのでしょうか。まァ、音楽ホールというより、ダンス・ホールのような設えで、音響的にもよろしくはないし、ヴィンテージだからいいというわけでもないし、ここは雰囲気、20世紀初めのプチブル、その気分に浸れれば良しと致しましょう。

開演時間となって、朝子さんと美幸さんがスタンバイ。
本日のメニューは、解説を必要としないほど定番化した名曲揃い。
秋風のヴィオロンを彷彿する、哀感たっぷりなラヴェルの「遺作」に始まって、恋情を歌うようなフォーレの「ロマンス」、ドビュッシー自身が最後に自演した傑作「ヴァイオリン・ソナタ」、今日はヴァイオリンとピアノでショーソンの代表曲「詩曲」、締めはお馴染みサン=サーンスの「ソナタ 第1番」。
何れも、唄うような語るような情感のこもった朝子さんの演奏は、まったりしていて、それでいてしつこく無い・・・結構なお味で。
そうそう、料理を引き立てるソース・・・どころか、主菜と並ぶほど存在感たっぷりで、相乗効果で味を盛り立てるのが美幸さんのSteinway
ソナタ3題は、何れも"ピアノとヴァイオリンのためのソナタ"。お互いを引き立てあうような、まさに料理とソース、どちらかが欠けても物足りなくなってしまう、二つが絡み合ってこその一品。フランス近代音楽の一番美味しいところだけに、朝子さんと美幸さんのお二方が丁寧に調理しました・・・的な心遣いまで見えるような演奏。
秋のフレンチ・コレクションは飽きのこないメニュウ・コンプレ・フランセーズ。食べ慣れた・・・耳に馴染んで、それでいて飽きのこない、こんなメニューなら幾らでも食べられちゃいそうですな。

食べ物にばかり例えていたら、叱られちゃいそうですね。

朝子
さんのヴァイオリン、音を探るようなこともなく、トレモロしても、グリッサンドしても、速いパッセージでさえ音の粒が揃って、至極当たり前のことなのだけど、ピッチ・コントロールがしっかりきっちりしていて、間近で聴いていても耳障りが良く、音も膨よかでなんだか芳醇なリッチ・テイスト、これが聴いていて実に気持ちいい。「詞曲」の独奏パートなんて、デモーニッシュと感じるくらいに蠱惑的。思わず、拍手するのも忘れちゃいましたねェ。
対する美幸さんが演奏するスタインウェイは、そのヴァイオリンに合わせてか、タッチが柔らかく優しげで、こちらは天使の声を思わせるほど。それでいて弱々しくはなく、しっかり響いて広がって、包み込むような印象。
だからと言って、ヴァイオリンとピアノが乖離することはなく、いいバランスで一体化。
何より、お二方が気持ち良さそうに、楽しんで演奏されているのが伝わってくるようで、なんとも美味しゅうございました・・・という感じ。


別腹になるアンコール。オーディエンスの拍手に応えて三曲も披露してくださったのですが、最後に用意されたのが、フレデリック・ショパンの「夜想曲」。ノクターン・・・ここは「フレンチ・コレクション」らしく、ノクチュルヌ。「第2番 ホ短調 作品9-2」を、ピアノ・ソロではなく、ピアノとヴァイオリンのデュオ・ヴァージョン。ショパンの甘やかなメロディはヴァイオリンでもいいデザート。


あっという間に2時間。もっと聴いていたくなるような、いい演奏でした。お腹いっぱい、堪能させて頂きました。

そうそう、この週末から「大阪クラシック」も始まります。そして、「ワンコイン市民コンサート」も「日曜ガムラン」も控えています。食欲の秋とはいえ、カロリーオーヴァー? 太ってしまう?!
いい音楽を贅沢に堪能して、耳が肥えてしまう・・・ようですな!!

お後がよろしいようで。では、御免候へ。


んン!!!? ちょっと待てよ。
仕事終わりで駆けつけて、開演前は食事する間もなく、終演後は極上のフランス料理のフルコースを堪能したように気になって音楽でお腹いっぱい・・・な気分で・・・。耳は肥えて、胸は感動で満たされたのに、胃袋はエンプティ!? おまけに、気がつけば、もう食事を摂ってはいけない時間帯になってしまった。
耳は肥えても、身は細る!!!?

タグ:大阪倶楽部
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