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今年のピアノ・スペクタキュラーは!? ~ 大阪クラシック2016・第50公演 [音楽のこと]

今年の「大阪クラシック」は7日間で全81公演。その中にはフル編成の管弦楽や吹奏楽もあり、ソロ演奏や室内楽のアンサンブルもあって、取り上げられる楽曲も様々。中でもワタシが楽しみにしているのは、マエストロ大植英次が自らピアノを演奏される公演。ソロ・ピアノもありました。小編成のアンサンブルでナレーターつきの「子供のための交響的物語・『ピーターと狼』大阪ヴァージョン」をご披露されたこともありました。
ここ数年取り組んでおられるのが管弦楽からピアノ・アンサンブルへのトランスクリプション。4台8手で「交響曲 第5番 『運命』」や「タンホイザー序曲」、「春の祭典」を演奏されたこともありました。3台6手に合唱付きで「第九」を聴かせてくださったこともありました。
今回は、第5日の『第50公演』がその「Piano Spectacular」、3台6手で、ドビュッシーの「」とムソルグスキーの「展覧会の絵」がプログラムされています。

 

その『第50公演』は全席自由の有料公演、大阪市中央公会堂中集会室で、開場が12:30、開演が13:00。

ゆったりとランチを楽しんだ後、ワタシが会場に着いたのが12:15頃。すでにロビーには開場を待ち侘びる聴衆がざっと100名以上、キレイな隊列をなしていた。
中集会室は、普段はステージもなく、固定の座席もない、ガランとしたホール。ピアノ3台がどうレイアウトされるのか分からない。客席もどう配置されるか分からない。どちらにせよ、先客がこれだけいるのだから、望む席を占めるのは難しいだろう・・・などと考えていると、スタッフからその陣形が説明されて、ピアノは"三ツ矢サイダーのマーク"みたく突き合わせて置かれ、客席はそれを取り囲むように並べられる。大植英次が使うピアノについては、その位置を予め知らせておく・・・とのこと。
ここに詰めかけているオーディエンスのほとんどがオオウエ・グルーピー?! マエストロのお側近くに寄りたい、彼のご尊顔を拝したいという、 "大植英次ファンの集い"状態だろうから、その辺りから席は埋まると予想する。
"三ツ矢サイダーのマーク"ということは、メルツェデス・ベンツのスリー・ポインテッド・スター、あるいは三菱のスリー・ダイアモンド、何なら三つ葉葵?! どれにせよ、3台の鍵盤を同時に観ることは敵わない。
ワタシの関心事は、オーケストレーションが3台のピアノにどう割り振られるか。お顔を拝見するより、ピアニスト3名の運指をじっくりガン見したい。が、"三ツ矢サイダー"ではそれは望めない。さて、どこに陣取るか。

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ピアノは、Bösendorfer1台に、2台のYAMAHA。マエストロがベーゼン。

予定よりほんの数分遅れで開場。スタッフに導かれて、聴衆がお行事よく会場入り。ワタシもその列に従ったら、何処がいいと言う間もなく、マエストロの背中を拝む位置につくことになった。とりあえず、コンダクター・ピアニストの動きは確認出来る位置ではあるが、他の二人の指の動きを知ることは出来ない。耳をすませて聴き分けるしかない。そう考えていると、誰かが背後からワタシの肩を叩く。振り向いてみると、ヨッシュさん。『第1公演』では出逢うことが敵わなかったが、ここで偶然にバッタリ。
独りだと長く感じる開演までの待ち時間も、話しているとアッという間。開演時間となって、大植さんがご入場。洋装のスーツの上に紋付の羽織を羽織っておられる。
ピアノに向かう前にマイク・パフォーマンス。

4月14日に起こった「熊本地震」。被害も広範囲で甚大、その中で尊い命も失われた。被災された方々への弔意と慰謝の念を込めて・・・と、プログラムの前に、ピアノ・ソロで「熊本県民謡五木の子守唄』」。その哀悼の調べはしめやかで、歌詞のない、ピアノが歌うオラトリオ。「子守唄」の歌詞に込められた薄幸よりさらに哀しみ深い禍患への痛惜。

その演奏を終えて、一旦バックステージへ。再度ピアノの前に現れた時は羽織を脱いで、派手やかな洋装。このプラグラムの趣旨説明から。
3台のピアノでの演奏をお楽しみいただくとともに、その楽曲に関わる絵画をご覧いただくとのこと。ん? 「展覧会の絵」に因んで、絵画がエキシビションされるということでしょうか?
そうして、今回のパートナー、保屋野美和さんと尾崎雄飛さんを招じ入れる。

折れない三本の矢が集い、スリー・ポインテッド・スターの三つの星がひとつになって、3粒のダイアモンドが揃い、マエストロから見て、右手側に保屋野さん、左手側に尾崎さん。やはり、ワタシの席からはその二人の動きを確認することは困難。

まずはクロード・ドビュッシー作曲「 - 管弦楽のための3つの交響的素描(La Mer, trois esquisses symphoniques pour orchestre)」より『海の夜明けから真昼まで(De l'aube à midi sur la mer)』。
ドビュッシー
が幸福と醜聞の間にあった頃に完成させた管弦楽のための交響詩。作曲者自身による編曲で、彼自身演奏不可能としたピアノ4手版はあるけれど、さて、今回は6手、どんなハーモニーなのかと期待と心配が波のように押し寄せる。
ここで示された絵画は葛飾北斎の浮世絵「冨嶽三十六景」から『神奈川沖浪裏』。この楽曲のスコアの表紙にそれが描かれているから。
演奏は、(多分)ピアノ4ハンズ・ヴァージョンからのアレンジメント。
同じ楽器の音を聴き分けるのは難しい。せいぜい、幾つ音が重なっているかが取れるくらい。それも、大屋根を取り外したピアノ3台が寄り添って鳴っているうえ、ホールの天井で反響した音が返ってくるので、音響的にもあまりよろしくない。保屋野さんと尾崎さんの腕の動き、指の運びが見えないので、どう振り分けているのかは解らないが、時折り腕を振り上げて指揮を執るマエストロは、4手では賄い切れない部分を補っているのだろう・・・と推測する。
ドビュッシーが想像し、彼が創造したコルス島の「」とは異なるけれど、大阪湾に揺蕩う波は垣間見えた? オーケストラでの演奏とは全く別物だが、調和のとれた調べが広がる海を描き出して、これはこれで面白い。でも、ザ・シンフォニーホールなりフェスティバルホールの、音のいい場所で聴きたかった。ここで演奏するのは勿体無いよねェ。

続くモデスト・ペトローヴィチ・ムソルグスキー展覧会の絵(Картинки с выставки)」は先達て、7月26日に儚くなられたピアニスト中村紘子さんへの哀悼。
中村紘子さんは一時期この楽曲、もちろんピアノ・ソロ版に、積極的かつ精力的に取り組んでおられた。大植英次にとって、「展覧会の絵」といえば中村紘子先生になるのだそうだ。「原曲版」を元にしながら、粗野にして繊細、『プロムナード』での作曲者自身の歩みと細やかな色彩感を加えた絵画描写とのコントラストの妙、その表現は他の誰もが真似し得ない、かけがえのないものであったと大植さんはいう。
この作品はよほど演奏家や編曲家の好奇心を掻き立てるのか、クラシック界に留まらず、ジャズやロックにまで広がって、様々にトランスクリプションされている。「原曲」は少し希薄な印象で、絵画を題材にしている割りには色目に乏しく、ちょっと退屈。なのに、巧者の手に掛かると途端にカラフルになる不思議な楽曲。奏者によって、ニュアンスが大きく変わる。
オリジナルはピアノ組曲で、のちに"天才魔術師"モーリス・ラヴェルが管弦楽版「Tableaux d'une expositionにしたのが本家よりメジャーになっちゃった感がある。「展覧会」と聞くと、トランペットの変拍子が聴こえてきそうな気がするほど?
この楽曲は様々はアレンジメントが存在するがピアノ6ハンズは聴いたことがない。
「原曲」でさえ、ムソルグスキーの生前は出版さえされておらず、彼の死後、「ロシア5人組」の盟友でもある
ニコライ・アンドレイェヴィチ・リムスキー=コルサコフが改訂出版しちゃったからややこしい。それが「原曲」とされつつ、他の作曲家も補筆・改訂版を出す一方、管弦楽版などの編曲も加わって、ムソルグスキーから遠ざかることとなった。しかも、第二次世界大戦以降、東西冷戦の煽りを受けて、自筆譜が広く世界に公開されたのが1975年頃になってから。どれが「原曲」で、何がオリジナルか分からない状況が解消されたのが、ようやくその頃。
ワタシは、ELPことエマーソン、レイク&パーマー(Emerson, Lake & Palmer)版「PICTURES AT AN EXHIBITION」をリコメンド。ヴォーカルまで付いて、半ば別物の感がなくもないけれど、実験的で衝撃的で破壊的なプログレッシヴ・ロック・ヴァージョン。1971年の作品ながら、今聴いても超cooool!! 冨田勲のシンセサイザー版もエクスペリメンタルだけど、どっちが"刺さる"かといえば、ELP。ワタシにとって、「展覧会の絵」といえば、ピアノソロでもなく、管弦楽でもなく、エレクトリック・キーボーズ、ベース&ギター、ドラムスで演奏されるロック版。
そういえば、キース・エマーソン(Keith Emerson)も今年3月に逝去されましたね。ワタシは、彼やジョン・ロードの影響もあって、エレクトーンの上にシンセサイザーを積み重ねた・・・遠い昔。

とまれ!!

ピアノ3台6手版の「展覧会の絵」も、保屋野さんと尾崎さんが主だったパートを演奏し、マエストロは、時に指揮を執りつつ二人をフォローアップしながら、時に立ち上がって楽曲に登場するハルトマンのコピーを掲示する忙しさ。どれを「原曲」としてアレンジメントされたのかは分からないが、中村紘子さんが好まれた「原曲」に近いのでしょう。ラヴェル的な優美さより、ロシア・・・ウクライナ・キエフ的な剛健さを表現しているように感じたが・・・。

楽曲の終盤、『キエフの大門』途中から、マエストロはホール奥の別室に向かって腕を振る。と、そこから男声コーラスが響いてくる。2室を遮るドアをスタッフが微妙に開け閉てするものだから、その声は恰も異世界から聴こえる幻聴めいて、何が起こっているのか俄かに理解しえなかった。
男声合唱に女声が加わる。
マエストロが一層大きく腕を揮う。
合間のドアが開け放たれて、100名近い混声コーラス隊がホールへ雪崩れ込んでくる。
その合唱隊はちょうどワタシの後ろ、客席を挟んで、マエストロの背後に並ぶ。対面、保屋野さんと尾崎さんの後ろには合唱指揮者が立つ。
それまでの何方かというと粗野で無骨な印象だったものが、急に幻想的な色彩を得て、突然別の曲へと変わったような感覚。

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急逝した友人の画家、ヴィクトル・ハルトマンの遺作展覧会場を後にしたムソルグスキーは、その画家が設計した大門へと至ったのだろう。かけがえのない友人を失った悲しみをその門に語りかけたのかもしれない。
ムソルグスキーが生前、この楽曲には合唱を加えることにしたと認めた友人への手紙が発見されたそうで、それを再現したと大植さんは言う。昨年の「ピアノ・スペクラキュラー公演」でも「第九」をピアノ3台と合唱で演奏されたから、エンターテインメント性を高めるには合唱だとお考えになったのか・・・。歌詞がないので、いわゆるヴォカリーズ。ラフマニノフもびっくりぽん(!)ですがな。「大阪クラシック」ならではのそのサプライズに、我々オーディエンスも度肝を抜かれて、場内が一瞬ざわついたが、中村紘子さんもキース・エマーソンも草葉の陰で驚いておられるに違いない。プレイヤー、コンダクターとして演奏を披露しつつ、プロデューサーとしてコンサートを、このフェスティバルを盛り上げることに尽力されておられて、ただただ敬服するばかり。いや、楽しませて頂きました。

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時間の都合からかアンコールはなかったのだけど、公会堂でのコンサートのお楽しみといえば、マエストロの出待ち?!
ホール南側にハイヤーが待機しているのを目敏く発見し、ヨッシュさんと二人で、その前で待つ事暫し。演奏の疲れも見せず颯爽と現れた大植さんはマダム達の握手攻めを断る事なく対応し、それが途切れてからクルマに乗り込み次の会場へと出立された。

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我々ふたりも15:30開演の「第53公演」を目指して、会場となっているダイビル本館へと向かう。この公演は、何れも大阪フィルハーモニー管弦楽団の弦楽器奏者、久貝ひかりさん、中西朋子さん、佐藤まり子さんによるドヴォルザーク弦楽三重奏曲 ハ長調 作品74 B.148」。 美しく嫋やかではあったのだけど、キョーレツな「第50公演」のインパクトが尾を引いて、ワタシ的にはちょっと印象を薄くした。
アンコールは「ロマンティックな小品 作品75 B. 150」、その弦楽三重奏版「ミニアチュール」。

コンサートはまだまだ続くのだけど、もうお腹いっぱい堪能させて頂いて、ワタシはこれで帰宅。次はいよいよ最終日。フィナーレまで体力保つかな??


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コメント 2

yosshu0715

この日は大変お世話になりました!!(笑)
偶然席に座ったら目の前がJoJoさんでビックリしましたよ!!(笑)

この日の展覧会の絵のコーラスの趣向には感動しましたねー!!(笑)
最初はどこから声がするのだろうと会場をキョロキョロしましたよ!!(笑)

あれだけの人数のコーラスを揃えて、趣向を凝らしたコンサート、たった1000円はお得でした!!(笑)
大満足!!(笑)

そして中村紘子さん言えばカレーですよね!!(笑)
こんなところでランチと繋がるとは!!(笑)
やはりJoJoさんご慧眼!!(笑)


by yosshu0715 (2016-09-21 21:05) 

JUN1026

ヨッシュさん、コメントありがとうございます。
偶然とはいえ、あれだけ観客が入ったホールで近くに座れるとは、よほどご縁があるのでしょう(笑)。
それにしても、今回も趣向を凝らした演出で楽しませて頂けましたね。まさか「展覧会の絵」で混声合唱が入るなんて考えてもいませんでした。本当に、もっと音のいいホールで聴きたかったと思います。
そうそう、どうせなら、「ハウス ザ・カリー」にすればよかったですね(笑)。
by JUN1026 (2016-09-21 21:53) 

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