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ふたりの父 [音楽のこと]

今日は、早朝から先週他界した父の「以芳忌(二七日)」を営んで、そのあと本位牌を求めに仏具屋へ出向いて、昼食を挟んだ午後は「ワンコイン市民コンサート」。
通夜式、告別式で初めての喪主を体験して、かなり気疲れしてしまったのだけど、まだ暫く法要は続き、やらねばならない手続きも残っている。梅雨の晴れ間の真夏並みの猛暑日に、暑さ数パーセント増しな、ちょっと気忙しいスケジュール。法要の日程を変えるわけにはいかないし、といって、月に一度のお楽しみを諦めるわけにもいかない。バタバタするのはいつものこと。堺市の実家から大阪大学豊中キャンパスへ超高速移動します。

 

シリーズ第55回」となる今日のプログラムは、「父と息子の対決=バッハ家の場合:あなたの中に、父は生きているか?」を副題として、ヨハン・ゼバスティアン・バッハとその息子たちの作品が並ぶ、『武久源造「ピアノの発見」第二章』。

チェンバロ、ピアノ、オルガンを中心に各種鍵盤楽器を駆使して中世から現代まで幅広いレパートリーを持つ武久さんは「ワンコイン市民コンサート」に1年ぶり2度目のご出演。
昨年8月30日(→記事参照)に催された『第一章』では、オール・(J.S.)バッハ・プログラムとして、会館常設の1920年製ベーゼンドルファーを舞台裏に片付けて、武久さんご愛用のクリスティアン・ツィル・ジャーマン・チェンバロゴットフリート・ジルバーマン・フォルテ・ピアノがステージに並んだ。
バッハが活躍した頃に全盛であったそれらの古楽器、旧い形式の鍵盤楽器は精密に再現されたレプリカではあるけれど、方や1728年式のチェンバロ(クラヴィコード)なら、もう一方は1747年モデルのフォルテ・ピアノ(ハンマークラヴィーア)。我々が慣れ親しんでいるモダン・ピアノとは似て非なるものではあるけれど、そのDNAを今に伝えるキーボードの"父"。普段あまり目にする機会の少ない貴重な楽器たち。

そうそう、父と言えば・・・、

J.S.バッハは「音楽の父」とも呼ばれ、 折しも明日は「父の日」。

大バッハは、生涯に2度の結婚をし、20人もの子をもうけた"音楽界のビッグ・ダディ"。うち半数は夭逝したらしいが、成長した男子6人と女子4人の中から、のちに職業作曲家となったのが4名。
第一章』が父バッハの作品集であったのに対して、今日の『第二章』は父が遺した楽曲とその子、ヴィルヘルム・フリーデマンカール・フィリップ・エマヌエルが著した楽曲を聞き比べてみようというのがテーマ。偉大な父バッハとその子らの作品の中に、同じもの、異なるものを探ろうというのが主題。

バッハ家は、もちろん"父"と呼ばれるヨハン・ゼバスティアン(Johann Sebastian Bach 1685年3月31日(ユリウス暦1685年3月21日) - 1750年7月28日)が今も大作曲家と知られ、筆頭となっているが、彼以前にも多くの職業音楽家を輩出する音楽一家にして、音楽界のサラブレッド的家系。その経歴、業績や現在まで残る作品数から父バッハ大バッハとなってしまったのだもの、その子供たちはかなりのプレッシャーを感じながらの音楽生活だったのだろうと想像されるが、孫や曾孫、甥までこぞってミュージシャンとなっているのだから、その血統は相当に濃ゆゥいものだったのだろう。

その家系は途絶え、ひと頃は忘れ去られた"父"の音楽。のちの作曲家、音楽家に発見されて現在に至るわけなのだけど、その先見性、作曲能力の高さは、長く広く音楽界に影響を残し、例えばポピュラー・ミュージックでも彼の影響下から逃れ得ないくらい。

若い頃のワタシは早熟にして、年上の従兄姉の影響で、年少の頃からブリテッシュ・ロックにかぶれていたのだけれど、特にハードロック、分けてもDeep Purpleがお気に入りで、フロントで目立ちまくるギタリスト、リッチー・ブラックモアより、端っこで改造版ハモンド・オルガンを唸らせているキーボーディスト、ジョン・ロードに心酔し、轟音に埋もれて聴こえ辛い鍵盤楽器の音を拾うためにレコードが擦り切れるまで聴いていた。で、ピアノの先生だったかエレクトーンの講師だったかに、ハードロックが好きならバッハを勉強しなさいと勧められてからはそのシンパ。
ディープ・パープルのジョン・ロード(Jon Lord)も(ある意味)ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach)の子供。ジョン・ロードを"にーさん"と呼ぶなら、大バッハを"父"と慕わねばならない?!
The Beatlesのジョン・レノン(John Winston Ono Lennon)やLed Zeppelinのジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones)もThe Stranglersのジャン・ジャック・バーネル(Jean-Jacques Burnel)も?? ミュージシャンで、ファーストネームに"ジョン(ジャン)"が多いのは、みんなバッハに肖りたい・・・わけではない??

とまれ!! ブリティッシュ・(ハード・)ロックを語りだすと長くなる。それより、バッハ家の家庭事情を探りに大阪大学会館へ向かいましょう。

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いつも通り、開場が14:30で、開演が15:00。いつものように、バルコニーA-32がワタシの指定席。
1993年に複製されたのが、1728年にクリスティアン・ツィルが手掛けたジャーマン・チェンバロ。2007年にレプリケーションされたのが、ゴットフリート・ジルバーマンの工房で1747年に作られたフォルテ・ピアノ。その2台がステージに並ぶ。レイアウトこそ異なるが、昨年の『第一章』と同じ・・・?! んッ、なんか、違う気がする?!
ワタシの記憶が確かなら、前回登場したクリスティアン・ツィルは足鍵盤が付いていたような・・・????
証拠の写真はコチラをご参照あれ。→記事参照

開演時間となって、ステージに誘われた武久源蔵さんが向かったのはブルー・ペールな塗色を纏ったチェンバロ。最初の演奏曲は「イタリア風協奏曲 ヘ長調」。
イタリア半島に降り注ぐ陽光か、夜空を飾る綺羅星か。チェンバロの細い金属弦から現される音色は、キラキラと煌めいて、しなりを伴った硬さ。スティール弦を張ったアコースティックギターを抱えきれないくらい大きくしてみました的なそれ。
ピアノが打弦楽器なら、チェンバロは撥弦楽器。同じように大きなボディの中で弦を発音させる鍵盤楽器ではあるが、現代のピアノのような金属のフレームを持たず、比較的華奢な木製のボディに直付けされた弦を、フェルト製のハンマーではなく、プレクトラムと呼ばれる爪で引っ掻いて発音するために、音色的にはギター類に近い。
ピアノと違って鍵盤で直接的に強弱を表せないチェンバロは、それに変わるレジスターまたはストップと呼ばれる仕掛けを持ち、さらに鍵盤を二段にして音の大きさを使い分ける。メカニカルな機構によって発音されるその音色は数学的なバッハの楽曲によく合って、それでいてお堅い印象は薄く、そこはかとなく雅やか。
同じ楽曲ながら、前々回の『安岡志歩ピアノリサイタル』の際にBösendorferで演奏された時とは、受け取れる感触が全く異なって、やはりバッハの楽曲にはバッハの時代の鍵盤楽器が相応しいかと感じる。モダン・ピアノより表現力が劣るはずのチェンバロが多彩な表情を伴って歌っている。音量や抑揚で圧倒するのではなく、微妙なピッチ(音高)の揺れがえも言われぬ広がりを作り出して、惹き込まれるような、そんなニュアンス。

続く「半音階的幻想曲とフーガ ニ短調」はゴットフリート・ジルバーマンで。
1747年式のフォルテピアノは、チェンバロと比較して、幾分か現代のピアノに近いように思えるけれど、やはり金属フレームを持たずに、ずっとか細く、どこか女性的。弦の数も違えば、その種類も異なり、張力も低い。ハンマーで打弦するシステムはモダン・ピアノのそれと似ているが、まだまだ簡素・・・というか、ジルバーマンが自由に歌うのなら、完成形となったモダン・ピアノが複雑過ぎるのかもしれない。でも、古ピアノは、調律が狂いやすいなど、現代のピアノと比べて、女性的である分、いい声で歌うがその分気難しく、手がかかって取り扱いが厄介・・・といったところか。

インヴェンションとシンフォニア」へと続いて、15分のインターミッション。"父"の楽曲はここまでで、後半は息子たちの作品が並ぶ。

ヨハン・ゼバスティアンの再従妹でもあった最初の妻マリア・バルバラが遺した子、その長男はヴィルヘルム・フリーデマン(Wilhelm Friedemann Bach 1710年11月22日 - 1784年7月1日)。父から愛されて、楽曲まで賜っているというのに、あまりその期待には添えなかった不肖の息子?? 天賦の才の空回り? 純粋培養された、ヨハン・ゼバスティアンのクローンは、オリジナルと離れては生きていけなかったのかもしれない。それでも父から受け継いだ才能は多少なりとも実を結び、彼の著作曲も今に残る。

その長男さん、W.F.バッハの曲が2曲。
2台の鍵盤楽器のためのソナタ ヘ長調」。「2台の」とあるように、キーボード・デュオなのだけど、それがチェンバロなのか、初期のピアノをイメージしたものか・・・、今日はチェンバロとフォルテ・ピアノのデュオ・・・となると、もう一人プレイヤーが必要。ということで登場するのが、宮崎貴子さん。
彼女がゴットフリート・ジルバーマン高橋さんがクリスティアン・ツィルという布陣。似て非なる鍵盤楽器2台のハーモニーは、もちろん初めて聴くもので、そのコントラストがなんとも面白い。その楽曲は、父ほどの計算高さは見えないものの、その分適度に奔放で、なんとはなしにプログレッシヴなロックテイスト。
独奏鍵盤楽器のための12のポロネーズ」は高橋さんによるジルバーマンのソロ。よく響くというより、よく通る声音。

同じくマリアから産まれた次男がカール・フィリップ・エマヌエル(Carl Philipp Emanuel Bach 1714年3月8日 - 1788年12月14日)。音楽家として活動する傍ら、法律を修め、論文を綴ったりと学問の人。おにーちゃんと違って(?)、秀才肌であったようで、父を超えようと奮起するもあまりに父は偉大過ぎた。時代の流れも影響したのかしらン? 末弟のヨハン・クリスティアン・バッハ
(Johann Christian Bach 1735 - 1782)とともに、ウォルガング・アマデウス・モーツァルトと親交があったようでもあるし、もしかしたら、従前のちょっと理系寄りの音楽を、より感情過多で装飾的な文系に転換させたのは、父を凌駕しようとした息子たち?
まァ、父や兄とは少し味わいを異にして、(ニュアンスとして)ハードロックの後のニューウェーヴといったところ?

彼の作品からは、「2台の鍵盤楽器のためのデュオ」。宮崎さんがゴットフリート・ジルバーマン高橋さんがクリスティアン・ツィル

貴重な古楽器で演奏されたバッハ・ファミリーの楽曲。父と同じ道を歩みつつ、父とは違うところを目指した二人の息子たち。父から受け継いだ遺伝子が濃ゆ過ぎて、音楽様式に変化に対応仕切れなかったのかしらン?
まだまだこの時代は、職業作曲家の地位は確立されておらず、パトロンがいて、オファーがあって曲を作っていた時期。父にしても、宮廷楽士や教会オルガニストが本業。息子たちは作曲の技量や演奏のスキル、音楽家としての才能より教会や宮廷に取り入るための処世術に長けていなかったのかも。大きな父の背中ばかり見て、世間を、世の中の変化を観ていなかったのかもしれませんな。

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コンサート終演後、お許しを得て、ステージの古楽器鑑賞。昨年も拝見したのだけれど、『ピアノはいつピアノになったのか?』等々でお勉強したのだもの(→関連記事12)、興味は焦るどころか募るばかり。

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1728年式クリスティアン・ツィル(1993年作成)。
恐らく、当時も様々なヴァージョンが作成されたのだろうが、1993年にレプリケーションされたこれはFスケールの63鍵×2段。黒い白鍵(?!)は黒檀製で、白い黒鍵(?!)は象牙製。この白黒反転は、機能的なことに因るものでなく、オシャレのためでもなく、黒檀より象牙の方が稀少で高価であったから・・・らしい。なるほど。
重厚なモダン・ピアノと比べると、ずいぶんシンプルで、高級なトイピアノに見えなくもない?? それでも、鍵盤から弦に至る発音機構はちょっと複雑。

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1747年式ゴットフリート・ジルバーマン・フォルテピアノ(Gottfried Silbermann 2007年作成)。
モダン・ピアノと比してシンプルで華奢な拵えのハンマークラヴィーア。チェンバロより一層華奢にも見えて、なんとも愛らしい。本数も少ない細い弦を使っているから金属フレームが無いのか、金属加工の技術がまだ追いついていないから、それを持たず、細い弦で張力も弱いのか、いかにも黎明期な仕様。これらを拝見すると、産業革命による金属加工技術の向上がピアノを育て上げたと感じないわけにはいかない。
古楽器には古楽器の味わいがあって、近代的な楽器には完成された安定感がある。良し悪しはともかく、旧い時代の音楽にはその時代に合った楽器が、その楽曲の美味しいところを際立たせてくれるようで、いい調味料であると感じる。旧いものが大切にされて、旧い時代の音楽に関心が寄せられて、こういった演奏会が多く催されるようになればいいのだけれど・・・。とりあえずは、
来年『第三章』がご披露されることを願いつつ。

来月に予定されていた『張雷「視覚音画」"Sounds Drawn" 中国竹笛の美技』が中止となりました。よって、次回は8月7日(日)、『マルティン・カルリーチェク ピアノリサイタル ”超絶技巧を超えて:祈り” リスト作曲「詩的で宗教的な調べ」全曲演奏会』となります。
仏蘭西近代抒情詩の祖と言われるフランス・ロマン派の詩人アルフォンス・ド・ラマルティーヌの詩集『詩的で宗教的な調べ』に着想を得てフランツ・リストが二十数年の時をかけて完成させたピアノ曲集。演奏時間は約80分。"ピアノの魔術師"がマジックではなく、スピリチュアルに傾倒して作り上げた大作。神々しいものが見える・・・かしらン?!


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