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辻本 玲 無伴奏チェロ作品リサイタル [音楽のこと]

本日の「ワンコイン市民コンサート」は『辻本 玲 無伴奏チェロ作品リサイタル』。タイトル通りに、演奏者1名、チェロ1挺のコンサート。
Osaka University Hall常設のピアノ、Bösendorfer252の出番がないのは寂しいけれど、それに代わって、1724年製作のAntonius Stradivarius静穏なる調べを紡ぎ出し、それを補って余りある演奏でさえあれば・・・。期待を胸に大阪大学豊中キャンパスへ向かいます。

 

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1挺のチェロのために用意されたプログラムは、

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007
クシシュトフ・ペンデレツキ無伴奏チェロのためのディヴェルティメント
エドワード・ベンジャミン・ブリテン無伴奏チェロ組曲 第1番

で、「無伴奏(unaccompanied)」と「独奏(solo)」と、何がどう違うの?

主に単旋律を演奏することが多い楽器の独奏で、ヴァイオリン属や管楽器での演奏が多くて、ワタシが一番慣れ親しんだ鍵盤楽器のための楽曲には「無伴奏曲」は存在しない・・・はず?
単旋律を得意とする弦楽器や管楽器で、独奏(solo)にとどまらず、他の楽器の伴奏を必要としない、1台でメロディもハーモニー、リズムさえ表現してしまう「無伴奏曲」。
その魅力がどこにあって、その真髄のなんたるかを知ることが出来るか・・・が今日の聴きどころか?!

いつも通りに、開場が14:30、開演が15:00なのだけど、早くから聴衆が詰めかけて、そのためか開場も少し早まって、いつも通りにバルコニー席に腰掛けて、開演を待つまでの間に約400席の会場が埋まってしまう盛況ぶり。

開演の時刻となって、ステージに登場するのは、名工アントニオ・ストラディバリがその晩年近く、300年前に造りあげた銘品を手に辻本 玲さん。舞台中央に置かれた椅子にスタンバイすれば、プログラムのスタート。

一曲目は、これぞ「無伴奏チェロ」とも言える、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach 1685年3月31日 - 1750年7月28日)作曲「無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 (Suiten für Violoncello solo Nr. I G-Dur) BWV1007」。「音楽の父」が1717年-1723年頃に著したとされる、6つの組曲の1番で、『前奏曲(Prélude c G-Dur)』、『アルマンド(Allemande c G-Dur)』、『クーラント(Courante 3/4 G-Dur)』、『サラバンド(Sarabande 3/4 G-Dur)』、『メヌエット I/II(Menuett I G-Dur – II g-Moll – I)』、『ジーグ(Gigue 6/8 G-Dur)』の、曲調の異なる6小品で構成される。
特に『プレリュード』はTV-CMなどでも多く使われて、知らない人はいないと思われる著名曲ではあるが、それは長らく歴史の奥底に置き去りにされていたらしい。ポリフォニー全盛期において、恐らく、より華やかさが求められる宮廷音楽には相応わしくないと思われ、より複雑で聴き応えのある楽曲が好まれるようになる頃には全くもって古臭いと敬遠されたのではないか。この楽曲が作られた頃の、いわゆる古楽器が廃れてしまったのもその一因かもしれない。

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確かに、スコアを見ると単純で、鍵盤奏者的には「左手のための練習曲」かしらン(?)と思える。なんの感情も交えずに譜面通り弾くと単純極まりないアルペッジョ・・・なのだけど、これをチェロが(叙情豊かに)奏でると、あら不思議(!)、分散和音が重なって、厚みのあるハーモニーにも聴こえる。当然演奏者のスキルにも因るのだろうけれど、チェロ独奏というより、4弦が奏でるオーケストレーション、それぞれの弦の特性まで計算されたアルペッジョになっている・・・ように思える。チェロの運指は詳しくないが、4弦が4声部として機能しているとも見える。
何がベーキングパウダーとして働いているのかを説明するのは難しいけれど、シンプルで無味乾燥的な分散和音が、ふっくらと美味しい楽曲に仕上がる。隠し味の不協和音がスパイシーでさえある。
緻密に計算された、ある種数学的な旋律・・・・思わず戦慄してしまう!?

一度廃れた、古楽器のための楽曲が現在に蘇って、広く知られるようにはなったが、これをパブロ・カザルス(Pablo Casals 1876年12月29日 - 1973年10月22日)が発掘し、演奏会用の楽曲としての解釈を加えたことによる。
現在のチェリストはほとんどカザルスをお手本・・・というより、神と崇めているのであろうが、本日の奏者、辻本さんもそれをトレースしていると思うのだけど、これぞバッハの「無伴奏チェロ」という標準形で破綻がない。ストラディヴァリウスがふくよかで豊かな声音で唄っているのが伝わってくる。安心して聴いていられる。音楽に身を委ねて、適度にリラックス出来るのがいい。

二曲目はクシシュトフ・ペンデレツキ(Krzysztof Penderecki 1933年11月23日 - )「無伴奏チェロのためのディヴェルティメント(Cello Divertimento)」。
カザルス
以降の、20世紀の「無伴奏チェロ」は、その楽器が持つ可能性を目一杯披露するような多彩な特殊奏法を含んで、多面的でカラフル。
この楽曲を演奏するにあたって、辻本さんは事前に、チェロの特殊奏法の解説を行う。ピチカートやグリッサンドに加えて、楽器に対してサディスティックな扱いを施すものやアクロバティックな運指を伴うもの、チェロの音色により表現力を与えるために工夫された技の数々。通常奏法とかけ離れた音を発する場合もあるためか、音を外したと思われないように・・・との予防線だと仰るが、この楽曲自体、バッハと比べて、あまりに現代的で、ややまとまりのない調性になっているので、そもそも外れたのが判りづらい?!

休憩を挟んで、三曲目もカザルス以降の現代的「無伴奏チェロ」。エドワード・ベンジャミン・ブリテン(Edward Benjamin Britten 1913年11月22日 - 1976年12月4日)が遺したそれは、保守的というか英国的というか、ペンデレツキより落ち着きがあって、それでいて、そこはかとなくジャジーでもあるような・・・。 この楽曲もチェロの可能性に挑むかのように、多彩で多様な奏法を要する。

安心して聴いていられるバッハもいいが、現代的でアバンギャルドな「無伴奏チェロ」も面白い。何より、多面的な表現がエンターテインメント的で愉快である。こう言う楽曲が多く聴かれる機会が増えればいいのだけれど、ねェ。
アンコールは「鳥の歌(El Cant dels Ocells)」とバッハの「無伴奏チェロ組曲 第3番」から。

チェロの魅力を味わわせて頂いて、その大きな可能性に魅了された、今日のコンサート。「独奏(Solo)」となるか、「無伴奏(unaccompanied)」となるかは、楽曲の成り立ちに因るところもあるけれど、チェリストのスキル、その表現力に依るところも大きい・・・わけですな。

次回の「ワンコイン市民コンサート」は、12月6日(日)、開場14:30、開演15:00、『谷本綾香 メゾソプラノリサイタル "España"』。"スペイン"をテーマに、歌い上げる歌曲の数々。これはBösendorfer252の伴奏付き!!


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